日本文化におけるコンピテンスの発達過程を実証的に明らかにする本研究計画の最終年度として、本年度は従来の研究成果を総合的にとりまとめるとともに、青年と4・50代の中年成人を対象とした以下の2つの質問紙調査を行なった。すなわち、(1)各側面のコンピテンスの自己評価、文化的自己観の内面化の程度、コンピテンス・文化的自己観の重要性認知、日常生活での社会的比較の頻度、の4変数の相互関係を検討する調査、(2)どのような心理特性が人格的成熟として重要であると認知されているかに関する自由回答式調査、である。 これら2種の質問紙調査の分析は既に終了しており、得られた分析結果、および前年度までに実施した調査の分析結果とも併せると、おおむね以下の4点が結論づけられるように考えられる。 すなわち、(1)コンピテンスの自己評価と相互独立性との相関が高く、しかも、その両者は成人期に上昇する様相を呈する、(2)成人期に高くなる相互独立性は、青年期において定着した相互協調性に基盤をおくものである、(3)コンピテンスの内的特性、および社会的特性に関する領域の重要性評価と、相互独立性の重要性評価とをみると、両重要性評価の相関が高い、(4)以上を総合的に検討すると、日本人成人においてもHarterの理論とほぼ一致するコンピテンスの傾向を媒介している変数は、相互協調性に基づく相互独立性である可能性があるといえる。
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