研究概要 |
共分散構造分析では,他の多くの多変量解析モデルと異なり,固定化した数理モデルをデータに当てはめるのではなく,データの性質・実質科学的知見・先行研究・常識・事前情報等を利用して分析者固有の数理モデルを構成することができる. しかし応用的な広がりと共に,大変残念なことに,共分散構造分析は因子間の回帰分析である,というステレオタイプ的な理解が広がり,このままでは共分散構造モデルの真の応用可能性が認識されない可能性がある.そこで本年は2つの活動を通じて共分散構造モデルの教材を作成した.1つめは,テスト理論の分野で世界的にデファクト・スタンダードになっている項目反応理論に関して,教材を作り,朝倉書店より出版した.また近年,注目されているデータマイニングの分野で,ID付きPOSデータの解析を行い,オペレーションズ・リサーチ誌に発表した. また収集した各統計モデルとその適用例の整理を進める一方で,平行して試験的に作製されたカリキュラムを学部学生に提示し,カリキュラム中の難しい箇所,習得すべき知識,つまずきやすい技能を,プロトコル分析とスーパーバイズを通じてピックアップし,対策を講じ,文科系の学部学生用の教授学習特性に関する知見を蓄積している.
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