本研究は、若年養子縁組(2歳未満の子どもを養子に迎える縁組)によって成立した親子関係において、育ての親とは別に生みの親がいることを子どもに早い時期から告知していくこと(真実告知)が、その後の親子関係や及び子どもの自己アイデンティティの形成に肯定的意味をもつという考えを、血縁親子との比較という視点を含めながら検証する。 当該年度においては、本調査に向けての予備的調査を行った。まず、「親子概念の測定」及び「子どもの親イメージの測定」については、幼稚園年中・年長児を対象にして、個別面接法により、人間の親子・ほ乳動物の親子を幼児がどのように理解し、生物学的継承理論を子どもがどのように理解しているかを調査した。この結果、年長児では、血縁が身体的類似性にとどまり、心理的類似性は同じ環境に成育することが影響するという理解が成り立っていることを資料として得た。 「真実告知の様態の調査」及び「親のもつ子どもの価値、子ども観の調査」については、本年度は、その実施にむけての準備段階として、調査に用いる個別面接調査票ならびに質問紙調査票の作成に取り組んだ。「真実告知の様態の調査」については、Open Adoptionによって養子縁組を成立させている養親と懇談し、告知の実施時期や方法、告知に対する子どもの反応など、調査のポイントとなる項目の選定に関わる具体的な資料を得た。また、養子縁組あっせん団体職員やアメリカのOpen Adoptionに詳しい研究者の意見などを参考にして、養親に対する面接調査票を完成させた。「親のもつ子どもの価値、子ども観の調査」については、先行研究で用いてきた調査票の項目を再検討するため、心理学のみならず社会学や家政学、生命倫理学など関連諸分野において最近行われた家族や子育てに関する研究成果を収集した。それらを参考にして、項目の吟味を行い、質問紙調査票を完成させた。
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