研究概要 |
本研究は、若年養子縁組(2歳未満の子どもを養子に迎える縁組)によって成立した親子関係において、育ての親とは別に生みの親がいることを子どもに早い時期から告知していくこと(真実告知)が、その後の親子関係や及び子どもの自己アイデンティティの形成に肯定的意味をもつという考えを、血縁親子との比較という視点を含めながら検証する。 当該年度前半においては、血縁親子群について子どもを対象とした本調査を行った。まず、「親子概念の測定」及び「子どもの親イメージの測定」については、幼稚園年中・年長児を対象にして、個別面接法により、人間の親子・ほ乳動物の親子を幼児がどのように理解し、生物学的継承理論を子どもがどのように理解しているかを調査した。この結果、年長児では、血縁が身体的類似性にとどまり、心理的類似性は同じ環境に成育することが影響するという理解が成り立っていることを資料として得た。さらに、年度後半において、非血縁親子を対象に,した家庭訪問を行い、同様な手続きによって資料を収集しつつある。 Open Adoptionを方針とする斡旋団体の仲介によって特別養子縁組を行った父母に対し、郵送による質問紙調査を行った。調査内容は(1)フェイス項目(回答者の生年月日や職業、家族構成、養子の生年月日など)、(2)子育てについて、(3)夫婦関係について、(4)家庭について、(5)テリング(生みの親の存在とそれにかかわることがらを子どもに伝えていくこと)について、(6)生みの親について、である。配布数85組のうち57組から回答があり、回収率は67.1%だった。養父の平均年齢は39.6歳、養母は38.0歳で、育てている養子の数は、1人が26組、2人が29組、3人が2組であった。養子全体の86.7%は1歳になるまでに養子縁組が成立していた。回答結果から、子育て、夫婦関係、家庭についての養父母の肯定的な態度が全体的傾向として示された。テリングに対しても同様であるが、すでにテリングを行っている養母1名が「もっと後になってから話せばよかった」と回答していた。また、テリングをしないつもりという養父、養母が各1名ずつあった。こうした回答の背景をさらに検討していく必要がある。
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