本研究は、若年養子縁組(2歳未満の子どもを養子に迎える縁組)によって成立した親子関係において、育て親とは別に生みの親がいることを子どもに早い時期から告知していくこと(所謂、真実告知)」が、その後の親子関係及び子どもの自己アイデンティティの形成に肯定的意味をもつという考えを、血縁親子との比較という視点を含めながら検証することを目的とする。当該年度においては、これまで血縁親子群について子どもを対象に行ってきた「親子概念の測定」と「子どもの親イメージの測定」について、養子縁組10家族への家庭訪問による調査を実施した。親子概念については、子どもすべてが生みの親と育て親を区別し、その違いを理解しちること、テリングの時期が早く、継続的である場合程、生みの親についての理解が深まる傾向が見られたこと、子どもの親イメージについては、母親の受容感は、テリングの開始時期が3歳以後の場合の方が高まる傾向にあり、父親の受容感については、そのような傾向が示されなかったことなどが明らかになった。一方、両親についての調査においては、Open Adoptionによって子どもを育てている父母(育て親群)57組の子ども・子育て観と夫婦関係を、実子を育てている父母(対照群)85組との比較により検討した。質問紙調査の結果、以下の特徴が見出された。1)育て親群は、子育て期を人生で最も幸せな時期と捉えていた。また、子どもを迎え育てることで夫婦の生活の幸福感を高めていた。2)対照群の父親は、育て親群の父親・母親や対照群の母親よりも、子どもに家の存続や人生の継承を望む傾向があった。また、育て親群と対照群の父親間では、育児参加状況に差がある可能性が示唆された。3)対照群の母親は子育てに負担を感じていた。その負担感には夫婦関係の要因が影響することが示された。育て親群の母親は子育てにあまり負担を感じておらず、負担感に対する夫婦関係の影響も見出されなかった。育て親群の母親の子育てを支えているのは、子どもを迎え育てている喜びそのものであると考えられる。
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