本研究は、2歳未満の子どもを養子に迎えることによって成立した親子関係において、育ての親とは別に生みの親がいることを子どもに早い時期から告知していくこと(真実告知)が、その後の親子関係や及び子ども自己アイデンティティの形成に肯定的意味をもつという考えを検証しものである。 育て親の態度を子ども・子育て観と夫婦関係に焦点をあてて調べた研究においては、(1)育て親の場合、自分達の子育てを人生において最も幸福なものと評価しており、夫婦の結びつきが子育てによってより強くなったと判断している。(2)生みの父親は、育ての父親よりも子どもを家系を維持するために大切であると判断している上、育ての父親よりも子育てへの参加度が低くなっている。(3)生みの母親は自分の子育てに心理的・経済的負担を育ての母親よりも強く感じており、そこに夫婦関係の影響が含まれているのに対して、育ての母親は子育てを負担と感じる程度が低く、家族の凝集性が高いと評価している。 育ての親の子どもに対するテリングと子どもの理解を検討した研究においては、(1)子どもが2歳未満の時にテリングを開始した育て親達は3歳以後に開始した場合よりもより頻繁にテリングを行う傾向にある。(2)子どもが2歳未満の時にテリングを開始した育て親の子どもの方が育ての親により愛着を示し、生みの親・育て親・自分という三者関係についての理解も進んでいると見なされる。 さらに、テリングと子どもの理解との関連について、5〜7歳児を対象にして調べたところでは、(1)子ども達がすでに生みの親と育て親との違いを理解している。(2)テリングの開始時期が早く、継続的であると生みの親についての理解が深まり、育ての母親への受容感が高まる。(3)身体的特徴と活動の好みは、生みの親と育て親のどちらに似るかについての理解にはこの年齢ではまだ到っていなかったことなどが明らかになった。
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