本年度は、(1)知能研究における思考スタイルの理論的位置づけの検討、(2)道具としての思考スタイル質問紙の開発、(3)平成13年度本研究費により収集した教授学習場面データ、および、教師へのインタビューデータの分析を実施した。 (1)知能研究における思考スタイルの理論的位置づけでは、その提唱者であるR.J.Sternbergによる「知能の三部理論」との関係から検討がおこなわれた。思考スタイルは、知能(認知)と性格との接点と位置づけられ、三部理論による心的な自己管理の特殊形態とさている。思考スタイルと三種の知能との間には関連性はみられるが、完全に一致しているわけではないことが示された。 (2)道具としての思考スタイル質問紙の開発では、標準思考スタイル質問紙の簡易版および学生用自己評定質問紙の開発およびの開発がおこなわれた。簡易版はこれまでの標準思考スタイル質問紙の項目数を半減したものであり、90名の大学生に実施した結果では、概ね思考スタイル理論と一致する構造の因子を抽出することができた。また、大学96名を対象にして実施した、学生用自己評定質問紙の評価において、質問項目内容の具体性・抽象性による影響を考慮する必要があることが判明した。 (3)教授学習場面データおよび教師へのインタビューデータの分析では、延べ900分にわたる教授学習場面データの詳細なトランスクリプトが作成された。教師自身に実施した思考スタイル質問紙の結果、教師による児童の評価、インタビューにおいて表現された教師の児童観、教授学習場面において観察される児童観との間には、一致する点もみられたが、他方で、不一致の点があることがみいだされた。
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