研究概要 |
本研究は,小学生を対象として,所得,利益,貯蓄,あるいは銀行やクレジットの仕組み,といった経済事象の理解の発達を心理学的に分析し,さらにそれらと親の金銭に対する態度との関連を分析することを第一の目的としている。また,子どもの金銭に対する健全な知識・スキル・態度の育成において,学校教育における金銭教育のあり方について,心理学的観点から検討を加えることを第二の目的としている。 上記目的の達成のため,本年度はまず,子どもの経済事象に関する知識・態度および経済行動の測定を行うためのツールの開発を行った。O'Brien & Ingels(1987)が作成した経済価値尺度(Economic Values Inventory)の日本語版の作成を行い,その信頼性の検討を行った。日本語版はほぼ完成をみたが,それを本調査に使用する前に,この尺度が小学生を対象に実施可能かどうかを検討するために,金銭教育指定校としてお金に関する教育を先進的に進めている2つの小学校(兵庫県春日町立進修小学校,鹿児島県大口市立曽木小学校)に出向き,担当教員と意見交換を行った。 以上の結果,経済価値尺度日本語版についてはほぼ完成をみた。ただ金銭教育指定校でのインタビューの過程で,金銭に関する健全な社会化を促すためには,家庭や学校における教育のみならず,地域との連携がきわめて重要であることが明らかになり,その視点を尺度の中にいかに反映するかという点が問題点として浮かび上がった。
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