研究概要 |
本研究は,小学生と大学生を対象として,経済事象に関する知識・スキルの発達を年齢横断的に分析することにより,子どもの経済的社会化のプロセスの心理学的理解を深めることを第一の目的としている。また,子どもの金銭に対する健全な知識・スキル・態度の醸成をめざす学校教育における金銭教育のあり方について,心理学の観点から検討を加えることを第二の目的としている。 上記目的の達成のために,本年度はまず,大学生の経済リテラシーの測定を行い,そのリテラシーと実際の経済活動,職業観との関連を探った。その結果,親から受けたお金に関するしつけの有無と健全な職業観・就労観との間に関連性が認められ,このことより,子どもの職業観が家庭内の親子のコミュニケーションの中で醸成されるという可能性が示唆された。 また昨年度に引き続き,金融広報委員会の金銭教育指定校としてお金に関する教育を先進的に進めている兵庫県春日町立進修小学校に出向き,子どもたちの活動の様子の観察を行い,同時に,担当教員と金銭教育を進める上での課題や問題点について意見交換を行った。 以上の結果,子どもの健全な経済的社会化を促すためには,家庭・学校・地域の連携による発達段階に応じた金銭教育プログラムの開発とその実施が必要なことが明らかになった。このためには,現在,金融広報委員会を中にして進められている「金融理解度向上のための年齢層別カリキュラム」の完成に向けて,心理学の立場から協力が重要である。また社会への「出口」にあたっている大学教育において,職業観の教育をも含めた広い意味でのキャリア教育が重要であることが明らかになった。
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