本研究は、自己学習能力を育むよう計画された授業を実施し、それが及ぼす効果を児童の学習成績のみならず、自己概念やメタ認知能力の発達においても検討する目的で実施された。その際、単なる授業の主効果だけではなく、適性処遇交互作用の観点から、児童の適性を組み込みながら分析した。授業担当者等との事前の打ち合わせの後、まず適性の測定として、授業実施に先立ち、自己概念・メタ認知の質問紙および事前の算数学力テストを実施した。授業は小学校5年生3クラスのうちの1クラス(36名)に対して、担任が実施し、主として算数の授業において、課題学習の意義の重視・課題の選択の自由度を高めること・意見を出しあうことの重視・自己評価・宿題としての自己学習を促すといったことに重点を置きながら実施した。自己評価としては「ふり返りカード」を作成し、授業後の記入を求めた。事後の効果測定としては、自己概念・メタ認知の質問紙、算数学力テスト(3単元分)を実施した。 来年度も継続される研究であるため、今年度はまだ分析も途中であるが、事後の算数の学力テスト得点や思考得点を従属変数とする重回帰分析においては、適性としてのメタ認知や事前の学力の主効果は有意であったものの、授業による単独の効果である主効果は、残念ながら得られなかった。自己評価や自己概念の分析からは、授業によってより客観的な自己評価や自己概念への変化が示された。特に「ふり返りカード」の実践においては、より具体的な記述が増える傾向にあり、今後は自己評価と自己概念の変化との関連性も分析していく予定である。
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