幼児がいかに自らの自己制御機能を発揮させて向社会的行動を行っているか明らかにするために、本年度は幼児の自己制御を自己主張・自己抑制についての認知から捉え、向社会的行動の出現過程との関連を検討した。研究1では、(1)自己主張・自己抑制の高低により、自己制御についての認知に個人差(4タイプ)があること、さらに、(2)自己制御についての認知の個人差によって困窮者に遭遇した場合の行動判断とその動機づけに差異があり、自己主張、自己抑制に対する認知がともに高いタイプの幼児は、他の幼児よりも他者の困窮状況を配慮した利他的な動機づけから向社会的判断を行う者が多いことが示された。これらの結果は、幼児自身が、自己主張できる、自己抑制できると認知することが、向社会的場面での行動判断を利地的な方向へ導いていることを示唆するものである。また、遊びは幼児の生活の大半を占めるものであり、向社会的行動の発動は、遊び場面でだれと(社会的参加度)どのような活動をしているか(活動内容)という文脈に左右される。そこで、研究2では、自己制御についての認知と遊び場面での仲間との相互作用との関連を検討した結果、自己制御についての認知の個人差について、自己抑制についての認知が低いタイプの幼児は仲間との相互作用が少ない傾向が示された。幼児は、仲間との相互作用の中で対人行動である向社会的行動を学習することを踏まえると、自己制御についての認知の個人差は幼児期における向社会的行動の学習に関与している可能性が示唆されたと言える。
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