研究概要 |
一般的に中高年者の認知・記憶機能は,加齢の影響によって低下していくといわれている.高齢者が認知・記憶のどのような側面において支障をきたしていると自覚しているかを明らかにし,質問紙の開発を最終的な目的とし,検討を重ねてきた.結果は専ら因子分析によって因子を抽出し,質問紙の項目の整理を行ってきた. 平成13年は,東京都世田谷区で2332名の訪問悉皆面接調査を行い,平成14年も,宮城県気仙沼市大島地区で1134名のデータを収集した.いわば,都市部と地方都市という2つの地域のデータを収集した. そこで,本年度は,都市部と地方都市という在住する高齢者の主観的な日常記憶・認知に対する地域差を検討するための解析を行なった.都市部の因子分析を行った結果,最適解として7因子を抽出した.地方都市では,最適解として8因子を抽出した.両者において共通の6因子が抽出され,それらはあらかじめ想定した因子であり,因子構造に大きな違いはみられなかった.高齢者の主観的な日常記憶・認知に対して地域による差がないことが示唆された. つぎに,加齢の影響を検討するために,都市部と地方都市それぞれの地域ごとに5歳刻みで因子ごとに合成得点を算出した.その結果,年齢が高くなるにつれて,得点に顕著な変化がみられなかった.年齢と合成得点の間に高い相関係数も得られなかった.主観的な日常記憶・認知に加齢が顕著に影響しないことが示唆された.年齢以外の影響の可能性が示された. さらに,本年度末の平成16年の2〜3月,縦断的方法による加齢の影響を検討するため,宮城県気仙沼市大島地区で再度を調査し行ない,データを収集した.
|