初年度の予備的研究、2年目の質問紙を用いる量的調査につづき、最終年度に当たる本年度は、欠落していた情報を文献、インターネット等によって補うとともに、質的データを収集するために、代表的ケースにたいする聞き取りをおこなった。調査地は主に、関西地方であり1人つき約3時間、計15人について聞き取りを実施した。以下はその結果である。まず、自己の内部における「日本人」意識と民族意識(エスニック・アイデンティティ)の併存もしくは、葛藤状態にどのように対応しようとしてきたかによって、日本国籍取得者は「共生志向型」「同化志向型」「民族志向型」「個人志向型」に大きく類型化できる。ここで「共生志向型」とは自自己の民族性という「他者性」を「日本人」という意識と共存もしくは相対化させる戦略であり、「同化志向型」とは民族性という「他者性」を否定していく戦略であり、「民族志向型」とは民族性という「他者性」を肯定していく戦略であり、「個人志向型」とは二つの他者性を肯定も、否定もせず自己実現をめざす戦略である。これらの四類型が権利を獲得しようとする際、文化的市民権の追求によろうとする類型は「民族志向型」と「共生志向型」であり、単一国籍の取得によろうとする類型は「共生志向型」と「同化志向型」であり、個人単位の「個人志向型」とは異なっている。さらに、これら四類型は、量的調査により得られた、「権利獲得」「出自隠蔽」「出自承認」「国籍超越」の四類型とそれぞれ相応していることが、結果として表れた。
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