研究課題
基盤研究(C)
1.北米では当事者の権利擁護についてはまず病院入院に対して制度が整備され行政の責任が明確であるとともに、独立した権利擁護団体が実際の権利擁護活動を担って公的セクター、私的セクターそれぞれの医療サービスを監視して権力の乱用を防止する。家族は重要なステークホルダーであり、家族以外の様々な地域支援資源を活用できることが患者本人と家族双方の権利擁護となることがわかった。一方、日本では精神病院の設立・運営を私的セクターに依存している行政が、病院入院における権利擁護に強く踏み込んでいないだけでなく、退院後の地域支援の選択肢が少なく家族の受け入れに頼らざるをえない現状では、精神医療審査会は退院請求の審査において家族の意向を相当に考慮しがちで権利擁護機能を充分に果たせないことがわかった。当事者の権利擁護と地域資源の整備には緊密な関わりがあることを明らかにした。2.病院からコミュニティへ患者が生活の場を移すにつれ、治療の継続が必要な患者の治療確保が大きな課題となる。病院内の入院患者に関する権利擁護の法制度が整備された一方、各州や国が地域で生活する患者に対し治療を受けることを強制する法制度を形成していることがわかった。その運用と患者の権利擁護との関連については新たな課題である。3.アメリカ合衆国では患者当事者を受け身の治療対象とみなさない社会モデルとして1990年代から「リカバリー」が提唱され、郡や州の精神医療政策に導入され当事者の関与を押し進めるプログラムが進行している。その背景には積極的な当事者運動の蓄積がある一方でマネイジドケアの導入による社会資源振り分けをめぐる公的・私的セクターのせめぎ合いがあることがわかった。医療・福祉サービスの市場化が当事者の権利擁護に及ぼす影響についてはより慎重な分析を必要とし今後の課題である。
すべて 2004 2003
すべて 雑誌論文 (6件)
生と死を考える(細見博志編)
ページ: 201-225
Theories of Birth and Death in Our Society, (H.Hosomi ed.) (Hokkoku-Shinbunsha)
金沢法学 46-1
ページ: 137-157
おりふれ通信 221
ページ: 6-7
Kanazawa Hogaku 46(1)
Orifure-Newsletter No.221