本研究の目的は、地域共同管理の主体形成過程を、主として地域住民組織・行政・NPO間の協働関係形成過程に焦点をあてつつ、地域社会学の視点から実証的に研究することであった。 調査研究は、従来から科研費で行ってきた調査対象地を追跡調査するかたちで進められた。本研究の成果を以下にまとめる。 沖縄においてはNPOなどの市民セクターの発展はきわめて限定的である。那覇市およびその周辺を除いて、地域住民組織が地域生活に重要な役割を果たしている。それがカバーする事務の範囲も広く、住民同士の連帯性も強い。その点において本土の地域住民組織よりも伝統的な性格を残している。しかし、地域共同管理という面においては、行政依存の傾向が一般に強い。その理由としては、一つは基地の存在がもたらす居住環境の制約であり、いま一つは「生きられた」後進性である。 北海道の地域社会は、北海道全体に共通する特性と地域的偏差を併せ持つ。ここでは、調査対象とした十勝地域に関する知見を述べる。北海道の一般的な特性であるが、社会構造自体が供給者を中心に組み立てられている。農業、およびインフラ整備のための建設業が基幹産業であり、それらセクターと国から財政資金を獲得・分配する官僚機構がきわめて密接な関係をもっている。それは単に経済の次元の特性だけにとどまらず、社会構造自体の特性になっている。言い換えれば、北海道において供給者保護・中央政府依存という特性が社会のすみずみまで行き渡っているのである。 今回、海外調査は中国の長春市の居民委員会について行った。現在、中国は地域における住民の「自治」組織の再編を、都市管理行政の刷新の一環として遂行中である。その過程において、企業、行政、住民団体、政治組織(共産党)など、複数の機関・組織間の新しい関係が形成されつつある。
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