本年度は規範意識の基礎的研究を目指し、規範論・道徳論関係の基礎固めをした。昨年度、在外研究で訪問したハーバード大学ライシャワー研究所で得られた成果は、13年3月に刊行された二つの論文(「公共性の理論と構造」社会学雑誌、第18号、「複合社会の公共空間」近代、第87号)で一応のまとまりを得たので、本年度は更に進めて、公共性の基盤となる道徳意識と規範構造の分析を目指した。そこでこの目的を達成するために、本年11月から12月にかけにオックスフォード大学デュルケーム研究所ならびにフランス社会科学高等研究所を訪れ、デュルケームの道徳論に関する知見を深めるとともに、現地の研究者と交流することによって、この分野の知見を深め、多くの情報を収集した。また、国内諸大学において文献収集ならびに研究交流を行って、社会システム論的観点から公共性と道徳意識を位置付ける努力をした。 このような研究の一環として、本年6月には社会学史学会2001年度大会(於:岡山県立大学)において「ハバーマス=ルーマン論争の学史的意味とモダニティ-デュルケームと関らせて-」と題してシンポジウムでの報告を行い、その内容を論文としてまとめた。これは日本社会学史学会機関紙『社会学史研究』の次号に掲載され、平成14年6月に刊行される予定である。 また、公共性論の継続的展開としては、リスク社会の構造をシステム論的に再考し、NPOのあり方とその役割等を関係させて「複合社会の共生空間-リスク社会のシステムと不知のエコロジー-」にまとめた。これは平成14年秋にミネルヴァ書房から刊行される『産業化と環境共生』に収録される予定である。
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