1.国の現地対策本部が強力な布陣で最初期から活動したという前例のない対応が、組織間調整にとってどのような影響をもたらすか、が研究の一つの焦点だが、理論的には国と現場の中間に位置する諸組織の調整能力の空洞化が危倶される。現時点では、国が用意してくれる抽象度の高い施策を地元側の要望と照らし合わせて翻訳する働きがあったと思われ、中間組織の有効性を認知した。 2.「未調整」状態は、統制不足、分業の不明確性、情報共有のタイムラグ、の3つの意味で捉えられていた。実動組織ほど一元的命令系統を欲するが、それは異なる組織が、各組織のラインを維特したまま合同的活動を行う際は、より上位のコマンダーが存在しないと、従う根拠がないという事情による。 3.他方、上位コマンダー登場の際の権限関係について、現行地域防災計画に想定されておらず、最終意思決定者が首長であるはずの各種住民対策に対して、首長より上位レベルで活動決定の調整を要したことが、かえって地元にとって煩雑になっており、地元には大きな制約として働いた。 4.火山災害においては、警戒期〜復興期に至る全過程に火山学者の関与が必須である点が他災害と異なる大きな特徴だった。科学的判断と政治的判断の接続については「北海道方式」が参考になるが、災害対応一般に応用可能なものではなく、火山に特化した適応システムといえる。 5.同種組織内であっても応援を受けることに伴うロジスティクスの確保が問題になることがわかった。北海道は面積が広いという点で大量の応援をかろうじて吸収できたが、超広域災害においては、残された課題のひとつとなる。などが得られた知見である。
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