1.「家族支援」の意義:児童の生活を支援する第一の基礎集団は家族である。この家族の機能の弱化についてはすでにさまざまな調査研究、文献で議論されている。地域、在宅型で児童の生活を支援するとき家族自体と家族に対する地域の支援サービスが欠かせない。さらに現在、児童の生活を支援する保健・医療、福祉、教育、司法との連携、これらシステムに再編、家族援助は欠かせない。そこで、児童の家族支援を研究することから始めることにした。 2.多様な家族支援調査について:そこで文献による理論研究と併行してS県K市を調査フィールドに取り上げ、次の3つの調査研究を開始した。(1)グループインタビュー法によるa.市民利用者団体、b.市民支援団体、c.専門職団体への調査を実施し、ビデオ記録による力動、逐語録による内容分析を経て、K市市民の家族支援ニーズを次のような7つ((1)託児支援ニーズ(2)家事支援ニーズ(3)情緒的支援ニーズ(4)経済的支援ニーズ情報入手支援ニーズ(5)移動支援ニーズ(6)文化的支援ニーズ)のカテゴリーに分類した。(2)K市市民うち幼児と低学年児童をもつ保護者を対象に質問紙による「家族支援ニーズ」調査を実施した。(3)県児童相談所の援助過程分析調査を実施した。 3.児童相談所の援助過程調査の意義と中間報告:児童の問題のうち、市民一般の育児不安と児童の虐待の問題は、その援助、支援システムと方法の開発共に緊急の課題である。特に、問題が複合し、援助を困難にするハイリスク家族については従来からソーシャルワーク分野の重要な課題であった。家族援助プログラム開発の基礎資料とするためハイリスク家族に対する予防と援助、回復過程の現状把握を目標に児童相談所の児童福祉司による問題別援助過程分析を実施した。個別ケースでは多機関・他職種との連携がとられてきているが、まだまだ個別援助過程自体の対応・処遇のための時間的余裕、専門援助技術が、危機介入時期を含む予防段階を始め、援助過程全般に不十分、かつ人材の量的不足が大きな課題として指摘される。成果は調査報告として4月始めに出版予定である。
|