地域・在宅型で児童の生活を支援するサービス供給方式には、既存施設を基盤とするもの、相談機関を基盤とするものの2つがある。本研究ではS県、K市を調査フィールドとし、地域を基盤に児童の生活支援における家族支援に焦点を当て、そのシステムづくりと関係団体の専門職、市民が児童の家族に適切に関わる援助方法プログラム開発を目標とした基礎的な調査部分を実施した。実施した3調査は3種類である。1.地域市民の「家族支援ニーズ調査」は、1)グループインタビューによる家族支援ニーズ調査(調査対象は、(1)市民利用者団体(2)市民支援団体(3)専門職団体の3分野)を実施した。の結果は、家族支援ニーズとして次の7カテゴリーがあがってきた。(1)託児支援ニーズ(2)家事支援ニーズ(3)情緒的支援ニーズ(4)経済的支援ニーズ(5)情報入手支援ニーズ(6)移動支援ニーズ(7)文化的支援ニーズである。次に2.数量調査(対象は一般市民。ただし、8歳以下の児童をもつ家族に限定した。また、データ収集先を市保健センター、民間保育園、児童館の親子遊び参加者、市内公立小学校1ヵ所)を実施した。結果は、(1)「託児ニーズ」は必須のものであった(2)家族以外の身近な人への相談の有無によって母親の心理的安定を求めるニーズが異なる(3)移動ニーズ(車社会が及ぼす生活環境に及ぼす影響大)の必要性(4)即応性に欠ける福祉サービス状況がK市の特徴としてあがってきた。三つ目の調査、3.児童相談所個別援助過程調査を(養護事例4例、うち虐待事例2例、肢体不自由事例1例、非行事例1例、計6例)実施し、ハイリスク家族への専門的援助過程と市民団体の関わりの現状を分析した。結果は、地域の中で一番家族への援助をしていると考えられてきた児童相談所にあっても措置決定のための調査中心で予防、回復につながる丁寧な個別援助まで手が届いていない現状が浮き彫りになった。
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