2001(平成13)〜2003(平成15)年度の研究実績は、以下の通り。 1.調査準備 先行研究を検討するとともに、虐待・暴力防止の予防教育プログラムを小学校向けに実施している複数の団体と接触し、本調査の大まかな予定(実験群・統制群の区別、複数回の実施、質問紙の構成など)について説明し、協力を依頼し、承諾を得た。調査実施小学校の選定等の実施要領の細部については、協力団体と話し合いながら決定することとした。 2.アンケート分析 プログラム直後の反応を把握するため、協力団体が実施しているアンケートをコーディングし、解析した。21校60クラス2233票の分析の結果、権利に関する知識の把握は8割だが、被害回避技法の把握は2割〜5割にとどまること、知識把握が女子や商業開発地域で高いことなどが明らかになった。 3.プレ調査、質問紙調査および解析 プレ調査での検討後、質問紙を作成し、過去3ヵ月間の暴力・虐待被害経・解決・解決手法、救援体験、自己信頼指標、他者信頼指標、プログラムに関する知識、感想などを調査した。2県4校の11クラスの約350名を対象とし、3ヵ月おきに3回調査をした。実験群6クラスは第1回調査の直後、統制群は第2回調査の直後にプログラムに参加するようスケジュールを組んだ。質問紙配付・説明・回収は協力団体に依頼し、実施者によるばらつきが出ないよう、マニュアルを作成して対応方法をそろえた。 分析の結果、時間の効果として被害経験率の低下と低自己評価の緩和、プログラムの効果として自己評価・受容の増大が認められた。また、プログラム前では解決に最も寄与するのは自己受容に関する2因子で、プログラム後では寄与因子の特定はできなかった。知識は3ヵ月後よりも6ヵ月後の方がよく把持されており、感想は変わらず肯定的であった。総合すると、プログラムの効果は限定的であった。
|