本研究の目的は、東北地方における国際結婚をめぐる諸問題と社会的包摂の現状とその特徴を明らかにすることであった。調査研究対象地として山形県最上地方を選び、1農村地域の配偶者選択と社会的人口学的要因、2行政主導の「国際結婚」の問題点、3市民生活者としての「外国籍配偶者(妻)」への支援と地域の課題について実証的な考察を行った。ここで用いる「国際結婚」とは日本国籍の男女と外国籍男女との配偶関係を意味する 日本の「国際結婚」の特徴は、短期間に急速に増大したことで、1980年までは結婚総数に占める割合は1%足らずであったが2000年には4.5%になった。また、「国際結婚」の70%以上が日本人男性と外国人女性との結婚であることもこれまでと異なる点である。 このような日本の全体的傾向は、最上地方では90年代にすでに始まった現象である。その背景には、1未婚男女数の恒常的な格差-20代女性の他出と伝統的な家父長的「家」意識の残存による農村地域における男性の配偶者選択の困難さがある。また、それを打開する為の行政主導の「国際結婚」の開始があった。2行政の結婚仲介における最大の問題点は、行政の個人問題への介入の限界と連携した仲介業者の特異な仲介方式への批判であった。早期に行政主導はやめたが増加し続ける「国際結婚」を支援する施策として、3外国人配偶者(妻)に対する日本語学習の提供を始めとして、健康やr国際児(外国籍母親の子ども)」に関わる保育・教育相談・情報の提供などを地域の市民活動と連携して行っている。さらに彼女たちが主体的な市民生活者として暮らす場として「多文化共生社会」を地域に構築する試みが進んでいる。
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