研究概要 |
本研究課題は,生口島(広島県瀬戸田町),大三島(愛媛県上浦町・大三島町),伯方島(愛媛県伯方町),大島(愛媛県宮窪町・吉海町)の4島6町を研究対象としているが,本年度は瀬戸内海島しょ部地域の全体像を把握するために,保健福祉行政関係者へのヒアリング及び愛媛県上浦町の現地調査を実施した。上浦町では,住民組織代表者,老人会役員及び会員,民生委員,保健福祉関係者(保健婦・介護支援専門員・訪問介護員)へのヒアリングを実施した。まず,瀬戸内海島しょ部における基幹産業である農業(柑橘類の栽培)は,農業従事者の高齢化,後継者(若年労働力)の流出という現実のもとに,離農者が増加しており柑橘畑は荒廃地化している実態が見られた。雇用機会を提供する地元産業に乏しく他地域への若者の流出は避けられない状況にある。平成11年5月に「瀬戸内しまなみ海道」(西瀬戸自動車道)の開通により,陸路交通による中国・四国地方との人的交流や物的流通が可能となった。この開通による住民生活への影響としては,通勤・通学・通院の手段が向上したことにある。通勤では従来のフェリーとしまなみ海道の併用による通勤,路線バスの開通による今治市内の高校への通学や島内に整備されていない総合病院への通院など,地域住民に便益をもたらしている面が見られた。さらに,平成12年4月より介護保険制度が導入されたが,島しょ部地域における保健福祉関係施設等は偏在しており町ごとに提供されるサービスは異なっている。上浦町では導入時に上浦町総合福祉センターを開設し、在宅支援サービスとしてはデイサービスとホームヘルプサービスを中心に提供している。居住地の地形上,移送(外出)サービスなどへの要望は高く,今後のサービス整備が課題となっている。同時に,老人介護に対する要介護者及び家族介護者の意識も伝統的に高いことが指摘された。
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