グローバル化時代に「二つの社会の出会い」、すなわち、ローカルな社会と、浸透してくるグローバルな社会の出会いを、「新しい地域研究」は検討する。ローカル、グローバル、リージョナルな3極構造を視野に入れ、ローカルな場における文化・社会に3つの点で注目する。 第1に、当該地域が育んできた文化価値に注目し、「住民達がこれこそ自ら住む世界だと考えている地域範囲」を確認する。第2に、「地域範囲」の文化価値が、政治中枢に対して有する「文化価値の相対的自律性」に注目する。第3に、中東、アフリカなど世界諸地域を比較し得られる知見を補完させ、文化・社会の変動を見極める。 文化価値の相対的自律性を、衣服が示すことがある。衣服は植民地化前後にも(例えば、ガーナのケンテクロス)、今日でも、人々は伝統に依拠し「浸透してくる社会」に対処した(旧ソ連体制下でのウズベキスタンのイカット)。逆に、人々は浸透する文化を受け入れることがある。オスマン帝国下でカラギョズが、北アフリカやシリア、レバノンに広がった理由は、政治中枢を人々の視点から批判したことにあった。政治的にトルコと他入りするギリシアにおいてカラギョズが広まり、今日も維持されていることは、こうした経緯をより具体的に伝えてくれる。 「自らの地域範囲」を志向する動きは、強まっている。モロッコは、ベルベル人に「伝統法」を一部で容認した。ラテンアメリカ地域では先住民の祭りが持続され、民族のシンボルを伝える織物を保護・育成する運動がNGOを通じて広がっている(マヤやチアパス)。「文化的なモノ」に注目することで、文化・社会変動に焦点を合わせた「立体的総合的な」地域研究が可能となる。
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