今年度は、浜松市と豊橋市の日系人の不登校の実態と両市にあるブラジル人学校が、日本の学校のオルタナティブになりえるか否かを中心に調査を行った。平成13年時点で浜松市には、650人の日系人を中心とした不登校児童・生徒がいる。この地域で不登校が増えた背景には、体験入学制度に代表されるような日本の教育界に根強い同化主義政策が大きく関係している。体験入学制度とは、小学生には希望者に、中学生には義務として1〜4週間のあいだ日本の学校に通学し、様子を知ってもらうものであるが、真のねらいは学校が、その間生徒を観察し、生徒のやる気や日本の学校になじめるか否かを判定することにある。教師のなかには、体験入学中に、隣近所の人に生徒の素行を聞きに行ったり、調べる者もおり、異質な文化をもった生徒を理解し、迎え入れるというよりは、同化のできない生徒を切り捨てる傾向の方が強い。体験入学中、生徒は教科書もなく、お箸とスプーンを持参するだけであり、これでは、生徒に日本の学校を好きになれという方が無理である。学校側には、異質な文化をもった生徒を理解し、学校全体で迎えるという姿勢がない。文化の格差に悩む生徒が出るのも当たり前といえる。また豊橋市では、同じ日系人でも、親が直接雇用で安定した仕事についている生徒の学習態度がよく、親の雇用の不安定な生徒に就学態度も問題のあることがわかった。これは、子どもの学習態度に親の雇用が深く関係している表れである。ブラジル人学校は、授業料等の費用が高いばかりか、経済活動の一環として営まれており、生徒の出入りも激しく、日本の学校のオルタナティブ(代替校)にはなりえない。日本語はあまり教えておらず、それでいて卒業後は日本で働く者が多いなど、せっかくブラジル帰国後の教育を受けていても、それが生かされていない。次年度は、さらに調査をつめて報告書の作成に結びつける予定である。
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