(1)コンスタンツ大学の社会科学文庫に収められているアルフレッド・シュッツの蔵書の中には、彼自身がその余白に重要なコメントを数多く書き込んでいる書物が100冊程度ある。本研究は、(i)多くが鉛筆で書かれているために、このまま放置しておけば次第に判読不可能になってくるに違いないそれらのコメント類をマイクロフィルムに収めて保存し、(ii)それらの書き込みをタイプ化し、(iii)それらのすべてをそれぞれの原著者とつき合わせながら検討することによって、多岐にわたるシュッツの思想と社会科学理論を全体的に解明していくことを目的としている。 (2)上記の目的を達成するために、(i)同文庫所収のシュッツの蔵書のなかから、アンダーライン、様々なマーク、コメントが書き込まれているものを選びだし、(ii)それらを検討しながらタイプ化するに値する書物を選定し、そのリストを作成したうえで、(iii)それぞれの書き込みを解読しながらタイプ化する作業を進め、(iv)それらタイプ原稿と原著者の当該部分をすべてマイクロフィルム化した(第二年度にシュッツの遺児から本研究のために提供された二冊についても同様の作業を行った)。 (3)以上の基礎研究が完了した後、全体を見直しながら、シュッツの「書き込み」の質と量の両側面に着目しながら、選定されたすべての書物を五段階に分けたリストを作成した。 (4)そのリストに、(i)ニュー・スクールでのシュッツの講義ノートにおける当該書物への言及に関する情報と、(ii)刊行されている彼の諸著作における当該書物への言及に関する情報とを付け加え、より利用価値の高いリストを作成した。 (5)マイクロフィルムと作成された書物リストを共同研究者に配布し、それぞれが各自の関心に沿った研究を進めたうえで、一堂に会して、本研究に基づく国際会議で取り挙げるべきトピックと研究者について議論をした。
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