本研究においては、平成13年度において大都市近郊ニュータウンの基礎的なデータを収集した。平成14年度については、春日井市高蔵寺ニュータウンの事例研究のうち高齢者ネツトの「ケヤキネット」調査を実施したが、充分な成果をあげられなかった。そのため、過年度に研究代表者が実施したパネルを利用して、半構造化された調査票を作成し調査を実施した。 平成15年度には、地域コミュニティー形成に寄与してきた地域雑誌「陽台の会」会員を対象に対して、前年度と同様の調査票を使用し聞き取り調査を実施した。結果の概要は、以下に記す。 1.大都市近郊ニュータウンは、居住者の入居時期や住宅取得意識、家族形成、世代交代などの点で等質性がみられた。そのため地域の消長も同調的であるが、地域開発の時期により、大都市近郊ニュータウン内において都市の居住者の高齢化は、差異がある。 2.居住者のライフコースをたどると、ないしは、戦後の外地からの引き揚げ者が、大都市域に移住し、借家・小規模住宅での居住経歴を経て、郊外立地のアパート、戸建て、公団住宅居住後、ニュータウンでの戸建て所有に至る経歴がみられる。 3.家族形成とその後の子の成長による住宅規模の拡大と更に、子らの就学・就業・結婚による離家による住宅の空洞化がみられる。ただ、高蔵寺ニュータウンにおいては、子らの家族が近隣に居住し、世代の継承が地域でみられ、親世代が祖父母世代となるとともに孫との関係が新たに生じている。 4.初期ニュータウン入居者たちは、家族規模の変化により、ニュータウン内での住宅規模拡大のための転居もみられた。第一世代の高齢化に伴い、生活の利便性の欠如が進行し、地域の商業地でのスーパーや商店の撤退、医師の高齢化に伴う医療機関の廃業など地域の高齢化が著しい。さらに、高齢者を取り巻く介護や地域文化の衰退なども大きな問題点となっている。
|