本研究は、3年間の米国カリフォルニア州サン・ホセでのフィールド調査を基にした教師のライフヒストリーの日米比較社会学研究である。 データ:3年間に、13名の現役高校教師および教師経験者について、ライフヒストリーの枠組みでインタビュー調査を行なった。また、カリフォルニア州の教育研究を専門とする研究者に対するインタビュー及び、高校での授業観察、公文書、新聞雑誌などのデータの収集を行なった。 調査結果の概要:報告書は以下の4つのテーマを中心としてまとめられている。1)教育改革者のライフヒストリー、2)人種民族と教師のライフヒストリー、3)世代と教師のライフヒストリー、4)教師たちのライフヒストリーから見えるテーマ。それぞれについて「教師自身の声」を描写する形式でまとめているが、4つの知見が見出された。 1.教育改革運動は、公民権運動やフェミニズム運動と深くかかわっている。特に、教育改革に活動的だった3人女性たちには、個人的生活におけるジェンダー問題が、その改革運動のきっかけとして関わつている。 2.教師のライフヒストリーと人種民族的背景は深く関わっており、同じ女性であっても、人種民族的背景が異なると、教育へのかかわり方が異なる。 3.30歳から40歳の若い世代の教師たちには、公民権運動という歴史的事件がリアリティを持たないものになっている。 4.日本の教師とアメリカの教師の比較を行なうと、教師志望動機、教師のイメージ、教育観などで異なった考え方をもつていることが明らかになった。そして、その違いは、カリフォルニア州の教育制度、人種民族状況、教職システム、大学入学許可制度などの違いを反映しているものであると言える。
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