本研究ではSSMデータを用いて、女性の職場進出がどのような社会的帰結をもたらすのかを、社会階層の側面から検討した。本研究の成果は、以下の4点にまとめられる。 (1)女性の社会進出に伴う世帯間の経済的不平等に及ぼす妻収入の影響ついて、1985年および1995年SSMデータの夫収入と妻収入を用いて検討した。その結果、妻収入が夫収入の不平等を低下させる役割は、1985年と比較して1995年では小さくなっていた。 (2)戦後の女性のライフコースと職業経歴について分析した。その結果、団塊の世代の女性で、学校卒業と同時に正規雇用者になり、その後、結婚・出産に際して退職し、子どもが中学にあがるまでにパート・アルバイトとして再就職するパターンが定着したことが明らかになった。そして再就職に際しては夫の収入が影響していることが推測された。 (3)階層帰属に関する認知(階層帰属意識)は、各個人がおかれた社会的文脈で異なることが明らかになっているが、女性の階層帰属意識の地域社会におけるコンテクストによる違いを、特に「郊外」をキーワードに分析した。その結果、郊外的地域(都市度が高く、職住一致度が低い)において、多様な地位変数が女性の階層帰属意識を規定していること、換言すれば階層帰属意識の規定要因の多元化が明らかになった。 (4)これまでの社会移動研究は、産業化と職業構造の変動に関心を持ってきたが、それは職業構造の変動を起こす外在的な要因として、あるいは人員配分における業績主義の浸透という観点からのものであった。ここでは、拡大産業においてポストが増える条件があるので、より自由な移動・転職が行われている(学歴の影響力の低下)、という仮説をもとに男女の職業移動を検討したが、こうした傾向は認められなかった。
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