本研究は、自然環境と人間社会との共生を目指す「持続可能な発展」の概念を明確化し、「持続可能性とは何か」「持続可能な社会の主体は誰か」「持続可能な社会のための指標と評価」を解明するために300冊に及ぶ文献研究を行なった。そして、持続可能性の概念の根本的原理には、生命中心主義や生物的多様性の尊重に加えて、エコロジー制約化での社会的平等と社会的公正のための戦い、あるいは文化的多様性への相互理解が不可欠であることの3点に加えて、「共生」が基軸概念となっていることが明らかにした。さらに、持続可能な社会を構築するための主体、方法、過程について理論的・実証的に研究を進めることで、持続可能な社会の主体論を展開した。 具体的な事例研究として本研究は、インドネシア・ロンボック島における持続可能な発展のための先進国と途上国との相互協力システム構築の可能性を、ギリ・アイル島を対象地域とするフィールド調査によって実証を試みた。とくに、インドネシア国立マタラム大学の農学部、経済学部、教育学部、農村開発センター、環境研究所、女性研究所からなる学際研究チームと協力することで、当該地域が抱える地域問題の構造を総合的に研究できるだけでなく、さらに、先進国と途上国の相互協力のための施設であるCELL (Center for Eco-Literacy in Lombok)をマタラム大学キャンパス内に設置し、同センターにインターネット設備を備えた環境教室を設置した。
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