本年度は、引き続き北海道における「とほ」宿への聞き取り調査を継続して実施した。また、昨年度ある「とほ」宿において紹介された、沖縄県石垣市および竹富町在住の移住者、そしてその移住者からさらに紹介された他の移住者を含め、集中的にインタビューを実施した。 その結果、北海道と沖縄というかけ離れた二つの地域であるが、脱都市移住におけるモチーフにかなりの共通性がみられることが判明した。この二つの地域への移住者は共に<旅>のモチーフが居住地選択の動機に滑り込んでいる。そして、現居住地への愛着(ならびに地域参加への意欲)においてもまた「選び取った場所」という意識が、地元住民とは異なる形で(ときには地元住民のそれよりも強く)、関与している。しかし、そうした愛着や意識は必ずしも<定住>や<永住>とは結びついていないことが、インタビューにおいては理解された。すなわち、ある意味で<漂泊>をはらむ<定住>なのである。その意味で、この意識を追求することは、今後、脱都市という領域にとどまらず、都市や郊外における住民意識の潜流を探ることに有効であると思われる。本年度は、こうした観点から、<漂泊>と<定住>の間における愛着というものを考えるにあたり重要となる'家族'に焦点を当て、愛着の形と言説との相互作用を探る論考を提示した。 平成15年度は、2つの<周縁>性に焦点をあて、補足的にインタビューを実施し、雑誌データの分析結果と照合させながら、移住と居住地選択・愛着の内実を他分野に応用可能な形でまとめる。 なお、データサーバー用のパーソナルコンピューターが不調となり、より安定的にデータ入力をおこなうため、新たに1台購入しシステムの入れ替えをした。現在、入力データ数は2038世帯である、入力は8月頃に完了の予定である。
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