研究概要 |
本研究の目的は、介護保険下での地域の介護支援システムのあり方を検討し、地域の特性に適合したサービスのあり方(支援を選択する枠組み)を検討することである。 研究方法は、以下の2通りを用いた。 1,情報源として岐阜県のA市の要介護認定調査と認定審査会の情報を用いて統計的手法に基づく分析を行う。(個人が特定できない情報でありA市から統計的に活用することの承諾を得ている) 2,介護者の利用支援の特性を明らかにするために介護支援専門員の臨床的判断を用いた事例研究をおこなう。 研究結果1:地域全体の支援の構造は、要支援から介護度IIまでの相対的に軽度の高齢者が主に利用している支援は訪問介護、通所系の居宅介護サービスであり、介護度でこれよりも重篤な人たちは入所や入院に傾斜している。在宅と施設の選択志向は、要介護度IV、Vで施設と在宅の格差が大きくなっており、要介護IIIがクリティカルポイントとなる。施設選択の要因は、排泄と痴呆(心身の機能に問題に伴う入所)とIADL(生活に支障をきたしたための入所)の2つがあり、施設利用の2極化構造があることが示された。 研究結果2:重度の人たちの在宅介護は、痴呆のない身体障害の人たち、また、医療ケアが必要でありながら状況が安定している人たちであり、いわゆる寝たきりと呼ばれる人たちであった。在宅介護の継続が困難になり生活場所を変更する要因は、排泄、痴呆、問題行動であった。介護からみると、夜間介護の発生、常時の見守りが必要な状況、人間関係の険悪化が入所選択に強い影響を与えていた。個別ケースの検討からも寝たきりケースは、介護時間が長く介護頻度が比較的多くても、介護が定型的であり、介護者が予定を組んで介護が行える場合には、在宅介護の継続を可能にしていた。
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