研究概要 |
本研究は,考朽密集住宅地区再開発において生起する諸問題を通して,わが国の今後の都市再開発のあり方を「人間の理論」に基づく人間遡及的・行動論的アプローチによって究明することを目的とする。具体的には,再開発地区住民に対して量的・質的な調査アプローチを行うことにより,「居住者」の合意形成過程を明らかにすることを目指している。 本年度は,昨年度量的調査を行った豊中市庄内地区との比較のために、第2の調査地である寝屋川市萱島東地区において重点的に調査を実施した。昨年度の豊中市庄内地区同様に,調査地区の歴史的背景,経済的・社会的実態の把握,関連法・条例・制度,再開発関連資料の収集,人口構成・住宅構成,社会資本等々の地域に関する基礎的なデータの収集,再開発現場写真の撮影等を実施すると同時に、質問紙による量的調査を行った。寝屋川市萱島東地区における再開発は市の進める補助金事業ではあるが、豊中市庄内地区のように市当局による多額の資金補助が行われることは少なく、権利者の協同・協調建替え事業であるところに、その特徴がある。したがって再開発に関わるアクター間の関係は、豊中市と比較すると非常に複雑かつ煩雑で、面的な再開発の進行は比較的遅い。だが、本年度の調査によって、むしろ昨年度調査した豊中市庄内地区の事例が、面的かつ大規模な再開発が一気に進んだ特異な例であることが明らかになってきた。事実、昨今の自治体の財政状況から、現在では豊中市型の再開発を行うことは非常に困難になってきている。 今回、寝屋川市萱島東地区で収集したデータは,統計処理を行うべく現在コンピュータに入力中である。これらのデータの分析結果と質的なインタビュー調査結果と併合し、豊中市庄内地区、寝屋川市萱島東地区両者の特性を比較しながら、現在報告書を作成中である。
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