痴呆になっても安らかに、その人らしく、喜びや楽しみがある暮らしを送れるための新しい住まい方として、またそのケアサービスのあり方として痴呆性高齢者グループホームが登場し、介護保険サービスのひとつとして位置づけられている。グループホームの量の増大が望まれる一方で、ケアサービスの質をめぐって様々な課題がでている。痴呆であっても、利用者が日常の家事などを行っている一方で、従来の措置制度のもとで「利用者本位の生活」が損なわれているところも見うけられる。高齢者にとって、食事は楽しみであり、「食事づくり」を通して心の安定や満足感が得られ、食欲もでてきて、ひいては「おいしく食べて生活全体を豊かにしている」ことが考えられる。目的:本研究は全国に設置されているグループホームを対象に行った「食事ケア・サービスに関する実態調査」より統計的解析を行い、食事の提供側からみた食事ケア・サービスを中心に検討した。対象と方法:調査は郵送法を用い、痴呆性高齢者グループホーム604を対象に行い、350施設(回収率59.3%)から回答を得た。結果:(1)職員一人当たりの利用者は2.3人であった。(2)栄養士のいる施設は16%であった。(3)利用者は痴呆レベルが広範囲にわたっていた。(3)特別食はカロリー制限食ときざみ・ごくきざみ食が実施されていた。(4)献立作成は施設内の職員が主に行うが、入居者と買い物に行ったり好みを反映させたり、利用者の参加も積極的であった。(5)1回の調理時間に90分以上かけ、食事作りの作業を職員と一緒に行う施設が多かった。(6)献立表の品数は同じでも、主菜や副菜の組み合わせによる内容で施設ごとに違いがみられた。まとめ:今回の調査から利用者が食事づくりなどを実践している施設が多数みられた。しかし、痴呆症状の悪化に伴い、嚥下障害や疾病に対する栄養管理も必要になってくることが予想される。それらの対応策も考慮にいれた食事ケア・サービスの施策作りも重要であろう。
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