平成14年度(最終年度)前半は、予備調査の結果を受けて主観的QOL評価尺度の再検討を行うと共に、前回の科研費研究の中で一部実施した客観的QOLの側面に当たる処遇比較調査と適応行動に関する調査にデータを付加した上で再整理し、それぞれ「中高齢知的障害者の処遇及び生活実態に関する研究-入所施設とグループホームの比較から-(発達障害研究第24巻1号)」、「中高齢知的障害者の加齢に伴う適応行動の変化について-入所施設生活者とグループホーム生活者を比較して-(特殊教育学研究第40巻4号)」という題名で雑誌論文として上梓した。主な結果として(1)余暇活動及び心理面の配慮でグループホームが入所施設を上回っている一方、物理環境整備及び他の日常生活面(入浴、洗濯介助など)での配慮で、入所施設がグループホームを上回っていた、(2)外部援助の導入に関しては、余暇外出と日常生活面で、グループホームが入所施設に比べ積極的であるのに対し、昼間活動面と老人福祉機関などの紹介面では逆に入所施設が積極的であった、(3)その他の生活実態では、運動習慣の充実度では入所施設が、余暇内容の豊富さと外出の自由度ではグループホームが上回っていた、(4)「経済的活動」、「移動」、「一般的自立機能」、「台所仕事」の領域で、障害程度に係わらず、入所施設生活者の適応能力がグループホーム生活者よりも低く、中軽度障害群での「数と時間」、「言語」及び「計画性」、重度障害群での「自己志向性」と「社会性」でも同様の差が見られた。直接面接による主観的QOL調査は未だ継続中であるが、現時点までの報告として、(1)休暇取得でグループホーム生活者の不満度が入所施設生活者より大きいのに対し、休日休暇の総合評価、余暇情報、休日の自由度、余暇援助、生活時間及びプライバシーの側面では、入所生活者の不満度が大きい、(2)評価尺度はピクトグラムと併用することで十分利用可能であるが、実用化に向けては、さらなる項目の工夫と精選が必要である。
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