アメリカにおける1950年代〜1990年代の公教育統治構造の変化をたどり、1950年代〜1960年代、1960年代〜1970年代、および1980年代後半以降の各時期に対応する3つの統治モデルをもって示した。こうした変化を踏まえると、SBMの意義は、教育当事者である親・住民と教員から長い間にわたって主張されてきた「参加」への要求が、教育現場である学校における「共同」というかたちで実現したという点に見出される。そのような公教育統治における学校の位置づけは、校内において「教授・学習」に連なる「教員」「親・住民」および「校長」の相互の役割機能関係の重要な変化を必要とする。そこで、とくに校長の役割の変化について、校長の職能開発に関する議論の変化をたどって明らかにした。具体的には、州教育長協議会のイニシアティブで開発されたISLLCの学校管理職スタンダードの翻訳を提示し、州レベルでの校長の役割機能の改革事例としてフロリダ州における「校長の資質能力」の歴史的推移を確かめた。 日本における「学校の自律性」に関する議論と、研究課題について検討し、校長の役割の捉えなおしと、そのための研究方法の見直しの必要性について考察した。そして、一つの小学校における学校改善過程の分析を通じて、学校の自律性における校長の役割のあり方を試論的に考察した。そこにおいて、親としての権利保障という制度的論議ではなく学校改善過程への親の参加というかたちで親のかかわりを位置づけること、および校長の役割機能の「間接性」への着目の必要性について論じた。 以上の日米比較を通じて、上意下達的、あるいは一方向的ではない学校組織観に基づく「学校の自律性」論の検討が、学校裁量権限拡大の趨勢のもとでは必要であることを明らかにした。
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