研究概要 |
本研究の目的は、ヨーロツパ教育関連語彙の系譜を明らかにするために、中世・近世を通じた教育関連語彙の用例を系統的に収集、整理することである。 (1)初年度たる本年度は、中心的史料として本研究の軸になる、書物の中の書物たる『聖書(Biblia)』の系統的分析に集中し、特に"education"という語について、1970年New English Bibleから遡って代表的な1611年欽定訳聖書(King James)および初の英訳聖書と言われる14世紀のウィクリフによる英訳聖書まで、デジタル化されている全12種の英訳聖書の中にその用例を検出し分析した。また、これを、中世をつうじて広く用いられたラテン語訳聖書(ウルガータ聖書)まで遡らせ分析した。 (2)"education"という語は、英訳聖書の中では、1611年欽定訳聖書(king james)において初出が確認された。それは、「ソロモンの智慧」2:12および「第二マカベア書」6:23, 7:27の計3箇所においてであり、それぞれウルガータ聖書ではdisciplinaあるいはnutriorとされているものの訳語として採用されている。他方、ウルガータ聖書では、"educa"で始まる語は、新約で3箇所、旧約では25箇所検出された。そのうちほとんどは、英訳では"lead""bring forth"bring up"などと訳される「導く」「引き出す」といった意味のものであるが(新約では「ルカ福音書」6:42)、一部に、"nourish""bring up"と訳される意味のものが見出された(新約では「エペソ人への手紙」6:4と「ティモテヘの手紙」15:10)。しかし、これらは欽定訳聖書を含めそれ以前の英訳聖書では、"educate"という語が訳語に充てられることはなかった。 (3)上記作業の結果は、用例データ・ベースに集積された。
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