1.本年度は、中心的史料として本研究の軸になる、書物の中の書物たる『聖書(Biblia)』の系統的分析に集中した。今回は英語の教育関連語彙を遡っていく予定であるので、1970年New English Bibleから遡って代表的な1611年欽定訳聖書(King James)および初の英訳聖書と言われる14世紀のウィクリフによる英訳聖書まで、デジタル化されている全12種の英訳聖書の中に教育関連語彙の用例を検出し分析することが中心的作業であった。これを、中世をつうじて広く用いられたラテン語訳聖書(ウルガータ聖書)まで遡らせ比較分析することによって、中世・近世をつうじた教育関連語彙の意味世界の歴史的変遷の見取り図をつくった。 2.上記作業の結果は、逐一、用例データ・ベースに集積した。 3.また上記作業の結果は、『育英短期大学幼児教育研究所紀要』第1号に、「教育の原像-デジタル聖書の戯れ」として、論文発表を行なった。 4.一方で、特に17世紀までに刊行された英語出版物の中から、教育関連語彙の系譜上特徴的と思われるものをピック・アップし、その書籍の収集に努めた。これには、これまでに西洋教育思想史研究が対象としてきた諸作品中の教育関連語彙を分析し、およびBritish Library蔵書目録データ・ベースの検索によりタイトル中の教育関連語彙使用状況の変遷を把握する作業である。また、古代・中世ラテン語文献を収めたCD-ROMの一部を購入し、その試験的分析を行なった。この本格的な分析は、最終年度の課題となる。
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