本研究では、インド及びバングラデシュのNGOを対象に、研修プログラムの観察調査ならびにインタビュー調査等を行い、基礎教育普遍化のための研修プログラムの実態と課題をNGOの専門的機能という視点から検討した。 1 NGOによる研修プログラムの類型 NGOが実施する研修プログラムには、(1)NGO自身の教育事業(ノンフォーマル教育センター、初等学校、成人識字プログラムなど)のインストラクターや教員、プログラムリーダー等を対象とする養成研修、現職研修、(2)自身の研修プログラムの実績・経験、ノウハウを背景として、他のNGOのスタッフの研修を支援するプログラム、(3)政府や民間企業と連携して委託される、主に学校教員を対象とするプログラムなどがあり、基本的に参加型アプローチの研修を行っているが、研修の目的、参加者の経験・特性、スポンサーとの関係等に応じてその手法は多様である。 2 NGOの専門的機能としての研修の特徴 (1)NGOにおける研修は、「カリキュラム開発」、「調査研究」「実践」などの他の専門的機能との有機的関連・連携を前提としており、これらの機能における成果が研修に反映されている。 (2)ひとつのプログラムをひとりのファシリテーターが担当するのが一般的であり、研修の連続性が保たれ、時間配分が柔軟であり、ファシリテーターが個々の参加者の状況を把握できる。 (3)経験を重ねたファシリテーターが参加者の考えや発言を引き出すようなインタラクションを行うとともに、参加者による歌や暗誦ならびに意見発表、グループワーク、ロールプレイなどの参加型アプローチを適宜組み合わせてプログラムが構成されている。 (4)研修を継続的なものと位置づけ、初期研修・養成研修に続いて、実践におけるフォローアップや月例の定期研修などが行われる。 (5)政府機関における研修と比べて、柔軟で先進的な研修、「学習者中心の新しい教育学」にもとづいた研修を実施できると考えられる。EFAの実現のためには、政府や国際機関もこのようなタイプの研修の重要性を認識しつつあり、経験とリソースを備えた専門的NGOを利用する傾向がみられる。一方、政府等から研修プログラムの委託によりNGOは財政的に安定するものの、政府等の意向に配慮しなければならず、NGOの主体性に問題が生じる可能性もある。
|