本研究は、1930-40年代の社会変動に注目して、それとの関連で教育や教育学の新しい動向を位置づけ、教育の現代化状況をその中で見いだして検討を加えることを目的としたものである。 研究を通して「教育人口動態」というカテゴリーを作りだし、それに基づいて全体の研究をまとめることができた。社会変動として工業化、都市化と教育との関係の検討を深めるなかで、そうした要因に規定されながら産出される教育人口が教育の実践や学に直接または間接的に大きな影響を与えているのではないかという仮説を持つに至ったからである。 それに基づいて史的教育人口動態論(historical educational demography)研究という方法論を構築し研究を位置づけた。実際には、教育と人口の言説空間、教育人口動態の実態、それらと教育学、実践の関係分析という3つの柱で構成する検討を行った。報告書は370頁を越える分析となった。 Iでは、人口問題研究会と人口問題研究所を中心とした「人口問題」を巡る言説空間に着目することで、1930-40年代当時の教育と人口の動態について検討した。 IIでは、教育人口動態の実態を学校制度の側と労働社会の側から押さえ、検討を加えた。 IIIは教育学を支える近接諸領域の展開を検討し教育学との関係を検討した。 これらを通して、この時期の教師の教育実践や講壇教育学の場やそこで産出される教育学は実践と制作をめぐって新しい展開を遂げていた点を押さえた。そうした展開が学校から職業社会へ教育人口動態の変動を基盤として、また教育学を構成する近接領域の新展開と密接な関連をもっている点との関係を示した。以上を踏まえて狭義の教育と政治という枠組みだけでは捉えられない、社会の側からの教育(実践、学)への要請の質について検討を行った。
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