研究概要 |
本研究では、障害児教育における親のパートナーシップ原理のあり方を検討するために,比較教育学的観点から、以下の3つの研究を実施した。 1.研究1では、1975年の「全障害児教育法」を中心に親のパートナーシップ原理に関する規定を分析した。その結果、アメリカでは、適正手続き保障(Due Process)が整備されており、子どもの教育措置の決定に親がパートナーとして積極的に関与していく権利が設けられていることが明らかにされた。また、各子どもに対して作成される個別教育計画(IEP)についても、その作成過程で親が積極的に関与していく権利が認められているなど、親のパートナーシップ原理が法的に明確に位置づけられていることが明らかにされた。 2.研究2では、1978年に提出された「ウォーノック報告」と同法に基づいて制定された「1981年教育法」、及び同法の修正法である「1993年教育法」と「1996年教育法」を中心に分析した。さらに、「2001年特別な教育的ニーズ・障害法」の規定も分析対象とした。その結果、「1981年教育法」とそれに続く法制度により、評価の過程に親が積極的に関与できる権利や、教育当局の教育措置の決定に対して不服申し立てを行う権利が認められるなど、親のパートナーシップ原理を積極的に保障しようとしていることが明らかにされた。また、親の不服申し立て事例の分析を行った結果、親の意思が尊重される傾向が強いことも指摘された。 3.研究3では、わが国の方向性を検討することを目的とした。わが国では、平成13年に「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」が出され、平成14年には「今後の特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」が出され、平成15年3月にはその最終まとめが出される予定であり、そこでは、保護者への情報提供や意見交換等の必要性が指摘されており、今回の外国の状況について明らかにされた内容の中には、今後参考すべき点が多々あることが明らかにされた。今後の課題としては、比較対象国を増やすと同時に、各国の文化的、社会的、経済的背景等を考慮に入れて、より広い視野から分析を継続すべきであることが挙げられた。
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