1.教育課程審議会答申(平成12年)のねらいを達成するにはポートフォリオと見取り評価の併用が必要であることが分かった。本物の課題、学習物等、評定については(1)ミシガン大学の学習物サンプリング・システム(WSS)を実地調査した結果、小学校中学年までではあるが、ポートフォリオと見取り評価の併用で可能になることを確かめることができた。それに加えて「学校評価」に関してはインディアナポリスの(2)キースクールの訪問によって、教師用ポートフォリオを軸にした教員研修の必要性を痛感した。わが国では、(3)奈良教育大学付属中学校(植西浩一先生による国語の自己評価法)、(4)信濃教育研究所(雑誌『信濃教育』の調査)、(5)新潟県の新井中学校(全教科の達成度評価)、(6)高知市立泉野小学校(算数の自己評価法)、(7)国際基督教大学附属高校(渡部淳先生による演劇知による実践)、(8)横浜国立大学附属横浜中学校(全教科のポートフォリオ実践)を訪問したが、特に(4)や(6)によって見取り評価構築のヒントが得られ、(5)によって、一つの学期を通した絶対評価の実践が参考になった。 2.評価規準は、子どもと一緒に創れば、評価と学びの連動に有効であることが分かった。評価規準の在り方や留意点については、上述の(1)や(2)の訪問で理念モデルを見出すことができた。しかし、わが国の風土を勘案すると、(5)のような実践を加味しながら、基本的には、私たちの協働研究グループの小学校と中学校の先生方に評価規準や評価基準表を意識したポートフォリオ実践をしていただいた結果、子どもと評価規準を創り、それを基に教師が評価基準表を作るのが最適であることが判明した。 3.優れた学習物の提示は、学びのモデリングや評価と学びの連動に対して効果があることが分かった。優れた学習物や評定法の例は、(1)の訪問によって入手した。他の実践校では、研究紀要等の形で学習物を把握している。とは言え、学習物の有効性は、私たちの研究グループによるポートフォリオ実践を通して明らかにすることができ、そこで抽出した学習物を収集して平成13年度末に『教科学習と総合学習における学習物サンプル集』として冊子化した。 4.評価規準と評価基準表を使った各教科の授業実践及び研修法については、安藤輝次編著『評価規準と評価基準表を使った授業実践の方法』(黎明書房、2002年)にまとめた。来年度は、見取り評価を含めた実践を行い、これまでの実践の特徴をビデオに編集する予定である。
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