地方自治体における教育情報の管理と公開・開示の実態を把握するために、今年度は神奈川県、福岡県、愛知県犬山市、愛知県尾張旭市を中心に、教育行政関係者、学校関係者からの聴き取り調査を行った。 神奈川県では、県教育委員会の情報公開・個人情報担当部局の発意から、指導要録の本人・保護者への開示が制度化された。しかし、市町村教育委員会及び市町村立学校の段階では、指導要録の本人開示を推進したり指導要録の作成段階での個人情報を保護したりすることの重要性は必ずしも理解されていない事実も散見された。これは都道府県と市町村とのズレではなく、一般行政部局と教育行政部局との意識のズレを反映するものであると見られる。 また、愛知県では、情報公開・個人情報制度に対する学校現場の対応として、あらゆる文書の作成を校長の決裁事項として扱う事例も見られる。校長決裁は個々の教員が作成する学級通信や学年通信にまで及んでおり、情報公開・個人情報の推進が新たな管理体制強化を生み出していると言えよう。また、文書作成・管理を目的とするペーパーワークの膨大化という事態も見られた。
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