1 国内の教育情報の公開・開示請求事案と、それに関する実施機関(教育委員会および首長)の決定、情報公開審査会・個人情報保護審査会の答申・裁判所の判決・決定を収集し分析・整理した。これを通じて、情報公開・個人情報本人開示への流れがほぼ決定づけられていることを確認した。しかし、その多くは公開・開示請求から訴訟というルートで実現されており、より簡便な請求方法による公開・開示制度は未だ制度化・確立していない。 2 国の情報公開法および個人情報保護法案をめぐる議論を整理し、それらが地方公共団体における情報公開条例・個人情報保護条例の制定・改廃にいかなる影響を及ぼしているか検討した。国の情報関連法制の動向は地方公共団体の条例制定への動きを加速させた。しかし、インカメラ審査が制度化されなかったこと、広範な不開示事由を方インしたことなど、とりわけ既に条例をもっていた地方公共団体に対しては、これまでの情報公開・開示の実績を後退させるおそれのある規定も盛り込まれたため、新たな問題の根が生み出されたと考えられる。 3 米国の教育個人情報管理制度の動向をカリフォルニア州・ロサンゼルス合同学区に着目して調査・分析した。とりわけ、学校構内の秩序維持と安全確保の要請が、個人情報保護の要請とどのように調整されているかについて検討した。犯罪に関与した学生・生徒または関与したと疑いをもたれている学生・生徒の個人情報が、1975年の家族の教育上の権利とプライバシーに関する法律制定時と比較し、安全に対する公的利益を優先して公開・利用に重点が置かれるようになっている。この傾向はとりわけ大学において顕著に見られる。
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