本研究の当初の研究計画は、(1)市町村教育委員会及び公立学校における公文書の管理及び公開・開示にかかわる問題点と課題を明らかにすること、(2)児童生徒の学習権保障にふさわしい教育情報の取扱い原則と情報管理体制のモデルを開発することにあった。この研究は児童生徒の学習権を保障する教育行政・学校運営に保護者または児童生徒自身が参加するルートを開拓するという実践的課題に応えようとするもので、本申請における地方分権的教育行政と自律的学校運営に対する民主主義的規制または合意形成という研究課題と密接に関連している。海外調査を含む調査研究により、次の研究成果が得られた。 (1)学校教育情報の公開・開示は教育委員会が定めるガイドラインにもとづき学校の判断により行うことが、教育の地方自治及び学校自治の観点から望ましい。 (2)学校教育情報の公開・開示や訂正の請求があった場合、当該学校に第一次的判断が委ねられるべきであるが、その決定に不服が申し立てられた場合は他の学校の校長・教員・保護者代表により組織される審査会において処理することが望ましい。 (3)保護者の主体的な教育参加を促しかつその機会を保障するためには、学校教育情報の公開・開示ルールを保護者に周知することが必要であり、学校または教育行政区で保護者マニュアルを作成することが望ましい。 (4)児童生徒と保護者の利益相反の可能性を否定できないことから、一定年齢以上の児童生徒には保護者から独立して学校教育情報の公開・開示を請求する権利が保障されるべきである。
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