研究課題/領域番号 |
13610297
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
宮本 健市郎 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (50229887)
|
研究分担者 |
金丸 晃二 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (30105192)
名須川 知子 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (50144621)
杉尾 宏 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (20033582)
伊藤 博之 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助手 (80243343)
西井 麻美 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 助教授 (90218107)
|
キーワード | 時間 / 時間割 / イギリス教育史 / アメリカ教育史 / 日本教育史 / 小学校 / 学校管理 / 学年制 |
研究概要 |
本年度は、先行研究の検討と資料収集が中心であった。先行研究としては、時間概念の歴史的変化を分析したものが参考となった。西洋においては、伝統的には時間は神の所有であり、勤勉や時間厳守の道徳は神への義務として認識されていた。そのような伝統的時間(自然時間)が根本から揺らいだのは19世紀半ばであった。時計が普及し、鉄道が走り、生産能率の向上を至上命令とする工場ができ、さらに進化論が競争を正当化したときであった。時間は人間が作り出すものであり(機械時間)、勤勉と時間厳守は競争社会を生き抜くための手段となったのである。 19世紀の時間概念の転換が、学校での時間割編成原理に大きな影響を与えていた。自然時間のもとでは神および自然の秩序に従うことが強調され、授業時間割はそのような道徳を内面化するための手段であった。教師は親に代わる権威をもっていた。これに対して、19世紀末になると、授業時間割は学校内の秩序を維持するだけでなく、変化しつつある社会、競争社会に子どもを能率的に適応させるための手段としても利用されるようになった。教師は親代わりの権威は持ちえず、専門家としての教育行政官が出現し、学校管理に関与するようになったのである。これはまだ仮説である。機械時間の影響について資料にもとづいて検証することが今後の課題である。 日本の場合は、自然時間から機械時間への転換が明治初期に急激に起こったと考えられる。明治初期に、自然時間が徹底的に批判されて、アメリカから機械時間にもとづく時間割が積極的に導入されたからである。しかし、府県レベルの小学教則が実際に個々の学校でそのまま実践されていたのどうかは、今後さらに検討する必要がある。 英米での時間割の出現は学年制・学級制および一斉授業の普及と密接な関係にあることが確認できた。すなわち、生徒をいくつかの集団に分類したにもかかわらず、教師がひとりしかいない学校では、ひとりの教師はそれぞれの集団ごとに時間を区切って授業をせざるを得なかったのである。それは学校の秩序を維持するための手段であった。機械時間が普及し、学年制・学級制が一般化したのちの時間割の変化については今後分析をすすめていきたい。
|