研究概要 |
第2次世界大戦後、ドイツの教育学者たちが自らのナチズム体験をどのように位置づけ、内的に克服しようとしたのか、という問題について、以下のようなことが解明された。 1 1920年代から1960年代までドイツ教育学において、主要な位置を占めていた精神科学的教育学派の中心的人物はヘルマン・ノールである。ゲッティンゲン大学図書館において、ノール遺稿文書集を調査し、この期のノールと他の教育学者との間の書簡、政府当局からの文書を収集、分析した結果、多くの「非ナチ化」に関する文書が発見され、戦後期のノールが周囲の教育学者の「非ナチ証明」に関わっていたことが明らかになった。また、私的書簡からはナチスの暴力的教育に対する批判が読みとれた。これらの資料の分析は、次年度の継続的課題とする。 2 戦後期、ノールがヴェーニガーやフリットナー、ボルノウとともに編集刊行した教育学雑誌<Sammlung,1945-1960>を分析した結果、その編集方針において、ナチズム期の教育を空白期間とし、ワイマル期の自由主義的な改革教育運動の遺産に再帰しようとする傾向が認められた。ナチズムに対する自省的意識は、明示的言辞としては希薄であった。
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