平成13年度に実施した、自閉性障害者、知的障害者各16名を対象にした表情動画の認知能力に関する研究の結果、言語性・動作性IQが有意に高いにもかかわらず、いくつかの表情では自閉性障害群の成績が知的障害群のものよりも低くなっていた。また、IQの程度に関係なく、表情認知の成績が低い一群が自閉性障害群の中に存在することが示され、彼らの反応は自閉性障害に特徴的なものである可能性が示唆された。 上記の研究は現在学会誌に投稿中であるが、この研究で得られた各表情の正答率などの結果を参考にして、パーソナルコンピュータを用いて表情動画を段階的に学習する表情理解学習プログラムを試作し、小学生から成人までの自閉性障害児・者十数名についてのデータを収集した。この研究を実施した結果、学習が割合順調に進む事例と、そうでない事例があることが分かってきており、これに関連する要因の検討が重要な課題である。また、学習前後の表情認知テスト及び保護者、担任等による日常場面での表情理解・表出に関する評定のみを実施し、学習自体は行わない統制群についても、ほぼ同数のデータを収集した。 また、先行研究で論じられている、自閉性障害児・者の驚きの表情認知の問題について、上述の研究データの分析より、驚きの表情の認知成績は、比較対象となる他表情の種類によって相対的に変化し得るものであり、自閉性障害群で特異的に低いとは言えないことが示唆され、その結果を論文としてまとめた。
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