本研究の目的は、人々が子どもについて抱いている観念、すなわち「子ども観」の現代的様相をとくに世代差を分析軸として明らかにすることにある。変動の激しい現代社会にあっては、世代によって「子ども観」は大きく異なっているだろう。 これまでの予備調査の結果を踏まえ、今年度は本調査としてK都市圏(1市2町)を調査対象地として層化2段階サンプリングを行い、2503名の対象者を抽出して郵送調査を実施した。調査結果から主要な知見を述べれば、以下のようである。 (1)若い成人世代は「子ども期」を長く捉える傾向があり、そして子どもらしさを純粋性に求める傾向があるが、高年世代は子どもらしさを従順性に求めている。 (2)若い世代は子どもの発達にとって環境を重視しているが、高年世代は素質を重視している。しかし若年世代は個性を重視した発達を、高年世代は社会の一員としての社会性を重視した発達を是としている。しかしいずれの世代も協調型よりも自己主張型の子ども像を肯定的に評価している。 (3)いずれの世代の成人も、子どもの生活環境の利便性については評価しているが、安全全性、快適性については相当に否定的である。 (4)総じて言えることは、いずれの世代も性善説的な「子ども観」を抱いているものの、今日の子どもたちに対する評価となると否定的である。そして否定的評価にならざるを得ない背景としてテレビゲームを初めとする遊びの変化と勉強に追いまくられるという子どもを取り巻く環境をあげている。
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