「沖縄県の国語教育史に関する実証的な研究」を行うために、第一年度にあたる本年度は、明治期以降の教育・国語教育関係雑誌を保管している教育・研究機関に出向き、沖縄県の国語教育史に関する資料や文献の調査・収集を行った。 今年度の県外調査は、梶村が主に国立国会図書館、国立国語研究所、東京大学教育学部図書室。文教大学付属図書館、日教組教育図書館、日本作文の会で行った。「季刊作文教育」、子どもの作品、秋田県や鹿児島県における方言指導の記録、「昭和14年11月国語対策協議会議事録」などに関する文献を収集することができた。村上は、関西方面での調査を試みた。 県内調査では、梶村が八重山の石垣小学校、宮古の伊良部小学校・佐良浜小学校、県立図書館、沖縄県公文書館などを訪れた。学校沿革史の調査の他、「沖縄教育」、各学校の記念誌や学校文集を収集することができた。 こうした資料の調査・収集を経て、今年度の成果として、梶村の「宮良當壮と『日本の言葉』」という論稿が執筆された。宮良は八重山出身の言語研究者であり、方言を中心とした国語学の研究と民俗学研究の両面において業績を残した人物である。沖縄の言語研究や国語教育にとって無視できない存在である。本稿は、そうしたことを踏まえ、戦後初期に国語改革の潮流を背景に、言語改良運動を全国的なレベルにおいて展開しようとして宮良が主宰した国語雑誌の資料的意義を、沖縄県の国語教育史とも絡めて論じたものである。
|