本年度は、「沖縄県の国語教育史に関する実証的研究」の最終年度に当たるため、報告書をまとめるために、論文作成において必要な資料の収集を前年度同様に行った。最終年度においても、資料の収集を追求したのは、沖縄県の場合戦火で大半の資料が消失し、県内だけで資料を得ることが難しいからである。それで今年度も、沖縄県の内外の教育・研究機関(東京大学の文学部や教育学部の図書室、国立国会図書館、独立行政法人国立国語研究所、早稲田大学図書館、法政大学沖縄文化研究所、日教組教育図書館、石垣市立図書館、石垣市立白保小学校、沖縄県公文書館など)と、個人では江口季好、大浜敏夫、宮城信勇、崎原久などの各氏にお会いし、沖縄の作文教育や標準語教育のことについてお話をうかがった。成果として、岩崎卓爾が大正期に発行した『児童の産業』(子ども向けの新聞)、生活綴方関係の子ども向け雑誌である『鑑賞文選』と『綴り方倶楽部』、竹原家文書『作文宿題』、文集『ひなわし』など、比較的入手が困難な資料を収集することができたことがあげられる。 報告書の作成については、梶村は「宮良當壮と『日本の言葉』」と「沖縄の作文教育運動」を、村上は「地域の言語文化と近代学校-八重山地域における近代学校出立の頃-」を、それぞれリライトして収録する。この他に、収集した資料、たとえば、子どもの作品や沖縄作文の会の機関誌について紹介する。
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